■幻の塩分

エニックス(現スクウェア・エニックス)刊の『月刊ガンガンWING』で1999年5月号から2001年11月号にかけて連載。いわゆる「エニックスお家騒動」で一斉に連載終了した作品の一つだが、中途半端または唐突に終了した感のある他の作品とは異なり、伏線の回収も含めて比較的まとまった形で結末を迎えている。外伝に『ぷりんせす☆ぶらいど☆すとーりー』がある。 あらすじ 舞台には幽霊のようなナイトメアと、邪眼(イーヴル・アイ)と呼ばれる特殊能力を持った瞳の邪眼の子供(ナイトメア)の、二種類のナイトメアが存在する。クレームドゥ=カカオは様子のおかしくなった姉を治してもらうため、なんでも屋のベルスタシオ=イヴルに依頼する。 19歳 サードに住むなんでも屋で賞金稼ぎ。右目が片方だけ邪眼(イーヴル・アイ)になっているため、片方が不透明なサングラスをしている。亡き父はクレームドゥ家の自警団長であり、幼い頃をクレームドゥ家で過ごした。そこで、コルクとデータ復旧 と出会うことになる。人の心を読む能力を持つ。邪眼(イーヴル・アイ)を持つ小動物のバクを連れる。ちなみに、名前の「イヴル」は作者が適当につけただけで深い意味はない。このため、邪眼との区別が紛らわしくなっている。友人からは主に「ベル」の愛称で呼ばれるが、カカオだけは「ベイル」と呼ぶ。愛用の銃は44オートマグ(の形をしている)。 クレームドゥ=カカオ 8歳 ペリドットの貿易商、クレームドゥ家の次女。姉の様子がおかしくなったことから、ベルスタシオ=イヴルに助けを求めに行く。世間知らずのため好奇心旺盛で、負けん気の強い性格。概ねカカオの視点で物語は進行していく。名前の由来は同名のリキュールから。 クレームドゥ=コルク 20歳 ペリドットの貿易商、クレームドゥ家の長女。ナイトメア(ソドモ)に憑かれたため、外部からの問いかけに一切反応しなくなっている。名前の由来は作者曰く「なんとなく」。 クレームドゥ=カシス 23歳 ペリドットの貿易商、クレームドゥ家の長男で現自警団長。常に冷静沈着。ベルスタシオ=イヴルにたびたびナイトメアを消す仕事の依頼をしている。名前の由来は同名のリキュールから。 クレームドゥ=フラン 推定16歳 ペリドットの貿易商、クレームドゥ家の次男(コルクの弟でカカオの兄)。ナイトメアやベルスタシオ=イヴルに対して敵意を抱いている。名前の由来はリキュールの「クレームドゥ・フランボアーズ」から。 タイムズ=アーリ 18歳 グルタルを相棒に歌を唄って日暮らしをしている。時たまベルスタシオ=イヴルにナイトメアを消す依頼を持ってきている。弟のタクトをナイトメアに殺され、恨みを抱いている。名前の由来はバーボン・ウイスキーの「アーリー・タイムズ」から。 カムリ=グルタル 17歳 アーリの相棒として芸人をし、一緒に旅をして生活している。霊感が強く、ナイトメアを直視することができる。名前の由来は「グルタル」は作者曰く「なんとなく」で、「カムリ」は作者の友人による。 ナイトメア 少年の姿をしており、幻想を見せる空間に人間を引きずりこむ能力を持つ。複数存在し、人間ではない。正体はソドモの能力が意識を持ったもの。 ソドモ 11歳(当時)邪眼の子供(ナイトメア・チルドレン)のセミナー で、当時はベルスタシオ=イヴルとコルクの友達だった。その強力な能力のために暴走したために殺される。名前の由来は作者曰く「どこかの国の少年少女音楽隊」から。 アミエル スカラベに住む郵便配達員。透視などの能力を持つ邪眼の子供(ナイトメア・チルドレン)で、自警団から依頼を受けたベルスタシオ=イヴルに殺される。名前の由来は作者曰く「何となく」。 センソナ 木々を操る能力を持つ邪眼の子供(ナイトメア・チルドレン)で、弟のブルアとふたりで暮らす。村人を数多く殺したため、村人の依頼を受けたベルスタシオ=イヴルに殺される。名前の由来は作者曰く「静寂」の意味するどこかの言葉から。 『ナイン』は、あだち充による野球漫画、およびそれを原作としたアニメ。週刊少年サンデー増刊号(小学館)にて1978年〜1980年まで連載。 その引き締まった内容と、後の作品群の類型となる登場人物達の配置などから、作者の最高傑作とされることもある。少女漫画誌から少年誌に移った中期の代表作。それまで原作付きがほとんどであったが、この作品はオリジナル。ただし、設定などにやまさき十三原作の泣き虫甲子園などの影響もあり、またこの作品は後の多くの傑作群の基本線となっていることから、前期と中期以降をつなぐ転機の作品ともいえる。 絵柄的にも過渡期に当たり、初期の劇画調から柔らかい独特のタッチへ徐々に変わる姿がみられるが、コメディータッチの絵柄と劇画っぽい絵柄が序盤から共存しており、あまり違和感はない。 県下の名門青秀高校への入学が決まった新見克也は、CFD 唐沢進と共に青秀高校野球部の試合を見学に出かけた。その途上、電車内で美女が痴漢される現場に出くわしたが、彼女は一睨みで痴漢を撃退した。 痴漢撃退の美女、および痴漢氏と球場で再会した新見達だったが、新見と唐沢は、横浜 土地 氏が全国中学野球大会優勝投手の倉橋永二だったことに気がついた。中学時代、マウンド上の倉橋は輝いて見えたが、現在の倉橋は青白く、とても同一人物とは見えなかった。 試合は青秀高校のコールド負け。「学業では名門でもスポーツは全然だめなのだな」と落胆する新見達の前を、痴漢撃退の美女は落涙しつつ立ち去り、新見達はその涙の前に入学後の野球部入部を誓うのであった。「彼女の涙は見たくない。笑顔が見たいんだ」と。 こうして、中学陸上短距離記録保持者の新見、中学柔道県大会個人優勝者唐沢、全国中学野球優勝投手倉橋、および痴漢撃退の美女中尾百合(青秀野球部中尾監督の娘)の高校生活がスタートするのであった。 野球漫画は外貨預金 もしくは投手が主人公というのが定番であるが、本漫画はセンターを守る俊足1番バッターが主人公である。この設定に最も近い有名選手であるイチロー選手は、小学館文庫「ナイン」1巻(全3巻)に「このくすぐったさ、たまんないね」というタイトルでエッセイを寄稿している。 新見克也  声:古谷徹 青秀高校野球部員。中学陸上短距離(100m及び200m)の記録保持者。1番センター。好物は五目寿司。 中尾百合  声:石原真理子(第一作)、倉田まり子(第二作、劇場版)、安田成美(第三作) 青秀高校野球部マネージャー。野球部監督の一人娘。 唐沢進  声:富山敬 青秀高校野球部員。中学柔道県大会個人優勝の経歴を持つ。5番ライト。 倉橋永二 声:塩沢兼人 青秀高校野球部の左腕エース。トラック運転手の父親と二人暮し。 安田雪美 声:坂本千夏 青秀高校陸上部員。新見克也に憧れていた。偶然同じ青秀高校に通っていたのを知り、アタックを開始。 山中健太郎 声:神谷明 中尾百合の幼なじみで武南高校野球部のエース。甲子園優勝投手。百合と偶然再会した後、克也の恋のライバルになる。 山中二郎 声:平野義和 山中健太郎の弟で青秀高校野球部の新入部員。2番サード。雪美に惚れている。 山中智美  山中兄弟の妹。健太郎と百合の仲を取り持とうとする。 中尾監督 声:永井一郎 青秀高校野球部監督。夏までに1勝しないとクビになることになっていたが、倉橋の加入で事なきをえた。小さい頃の山中健太郎に野球を教えた。 序盤は、互いの恋心に気づきながらも今ひとつ自分から積極的に出られない新見克也と中尾百合に対して、山中健太郎が絡んでくる三角関係。続いて安田雪美が二人に絡んで三角関係となり、さらに、そこに山中二郎が絡んでくる。 *第1話:笑顔の似合う少女 中学短距離の記録保持者である新見克也と柔道県大会個人優勝の唐沢進は、共に入学する青秀高校の野球部の練習試合を見に行く途中で、美少女(中尾百合)が痴漢に遭いかけているのに遭遇するが、その美少女はにらみつけて撃退する。 球場に着いた2人は、応援席で先ほどの痴漢が真剣に試合を見つめているのをみて、それが中学野球全国大会優勝投手の倉橋永二だと気がつく。そして偶然にも美少女・百合の方も試合をみていた。2人は、青秀高校の敗戦で涙を流す百合を見て、自分たちが野球部に入って笑顔にさせることを誓う。 2人は高校で同じクラスになり、しかも倉橋と百合も偶然にも同じクラスであった。2人は早速野球部へ行くが、野球部では倉橋が入部しないことが分かり、それどころではない様子。弱小野球部である青秀高校の中尾監督は、夏までに1勝できないとクビになってしまうのだ。そして、その涙を見て2人が入部を決めた美少女の百合は、中尾監督の娘であった。 練習後、百合と共に3人で帰る克也と唐沢の目の前に、下着泥棒が現れた。捕らえてみるとそれは倉橋であった。倉橋は父に好きな野球を禁止され、鬱屈していたのだ。克也たちは電話で、倉橋の父を呼び出す。倉橋の父は激怒するが、そこに克也の父親が現れる(克也は、倉橋の父を説得するために遅くなる、と家に電話を入れていた)。実は倉橋の父と克也の父は、甲子園の優勝バッテリーだったのだ。しかし倉橋の父は卒業前に肩を壊してしまい、以後の人生が狂ってしまったために、その轍を息子に踏ませまいとしていたのだった。しかし克也の父は倉橋の父に野球をやっていた頃の情熱を思い出させ、倉橋の父は倉橋が野球をやることを許可するのであった。 野球部に入った倉橋は早速1勝を監督にプレゼントし、ベンチ入りできない克也と唐沢は、百合の笑顔をスタンドからみることができたのであった。